ウェブサイトを持つにあたって、最初に迷うことのひとつが、「どのレンタルサーバーにしようか?」ということだと思います。でも、サーバー各社のホームページは、聞きなれない用語が多くて初心者にはわかりにくい。そこでこの講座では、基本的な用語を網羅しつつサーバー選びの考え方をお伝えします。

WS-2:レンタルサーバーの選び方

 個人向けに一般的な月1,000円前後のレンタルサーバーでも、それぞれに特色があります。また、あまり知られていないのですが、ワードプレスを使う場合には、「レンタルサーバーを借りるのではなく、セットアップ済みのワードプレスを借りる」という選択肢もありますので、あわせて説明しておきます。

サーバー選びの要は、安定性、バックアップ、拡張性、応答の速さとサポート

 この講座をお読みの皆さんは、ビジネス目的でウェブサイトを持とうとお考えだと思います。であれば、単純に目に見える数字と価格の比較だけでレンタルサーバーを選ぶことは、お勧めできません。

プランの例:さくらインターネット

 まず、レンタルサーバー各社の料金表に掲載されているディスク容量(保存できるデータ量)と転送量(スマホでいえばパケット)マルチドメイン(いくつまでドメインを設定できるかの数)は、知名度のある大手の事業者によるものであれば、どのレンタルサーバーも大差はありません。

 SSL(通信の暗号化機能)についても、大手のレンタルサーバーならば基本機能のひとつとして無料サービスが備わっています。

容量・マルチドメイン:数の比較は意味がない

 皆さんが今ご覧になっているこのサイトも含めて、札幌Geezerでは現在5つのウェブサイト(つまりマルチドメイン5個)を、ひとつのレンタルサーバーに乗せていますが、使用中の合計容量は2GB程度です。

 なので、一般的なウェブサイトを運営する目的でレンタルサーバーを借りる場合には、上記の表からすると完全に「余裕ありすぎ状態」なのです。

 ならば最も廉価のプランを選択すればOKかというと、残念ながらそうはなりません。以下に、サーバー会社およびプランを選ぶにあたって、考慮するべきことを列挙しておきます。

安定性:サーバーだって「落ちる」ことがある

 サーバー(厳密にはウェブサーバー:説明はこちら)は、毎日24時間稼働し続けているべきものですが、人が作ったものである以上故障はつきものですし、時には一時停止をともなうメンテナンスも必要です。

 廉価の安定性に欠くサーバーの場合には、『ちょこ停』とでも呼ぶべき小さな一時停止がたまに発生することがありますので、できるだけ安定したサーバーを選びたいものです。

安定性を評価するには?

 稼働率のデータは公表されていないことが多いので、周囲の人の評価も合わせて参考にすると良いと思います。札幌Geezerが使ってみた感触は、このページの後半に紹介しています。

バックアップ:機能の中身にも注意を

仕事用のデータならバックアップは必須

 バックアップについては、「定期的にバックアップを取る」自動化ができるか否かと、いざ復旧が必要となった時に、その操作がわかり易いか否かが重要なポイントです。

 データを失う時は、使い方を誤った場合がほとんどだと思いますが、どのようなバックアップになっているのかについては、各社のサイト内で説明があるはずですので、一度は確認しておきましょう。

 中には、バックアップは「データベースの提供のみ」という場合や有料のオプションサービスになっているケースもあるようです。サイト運営を始めて間もない場合には、データベースだけ提供されても「なんのこっちゃ?」状態ですよね?

 バックアップは、ワードプレスに機能を加える(プラグイン)方法もありますが、最近はレンタルサーバー各社とも、バックアップ機能を提供していますので、それを利用しない手はありません。

お勧めのバックアップ方法は、ステージング機能

 ステージング機能とは、自分だけ見ることができる別のサーバーを持つような感じで、公開したサイトのコピー(バックアップ)をそこに保存しておきます。

 サイトのデザインや機能を変更したい場合には、まずそのコピーに対して、試しに変更をかけてみて結果を確認。それがOKであれば、今度はそれを公開側にコピーすることができる、という優れものです。

拡張性:上位プランへの移行は容易か?

 アクセスが急増するのは、投稿した記事が話題となって検索から一気に入流するようになった場合と、ネット広告を使った場合です。

 特に、サイズの大きな画像ファイルや音声ファイルなどを多く公開している場合には、一時にアクセスが集中すると、サーバーの処理能力とネット回線の太さがボトルネックになりかねません。

 そのような事態が発生したときの対応は、「自動的に上位プランに移行(wpx Speed)」という場合から「上位プランに変更するには、プランを新たに契約してデータを移行することが必要(さくらインターネット)と、対応は各社それぞれです。

 せっかくアクセスを集めているのに、上位プランへの移行のために発信が中断してしまうようでは、泣くに泣けませんので、この点は各社の説明を確認しておきましょう。

応答速度:違いはどこから来るのか?

 サーバーの応答速度を決める要因は、大きく3つあります。

 「使用している機器のスペック」、「ひとつのサーバーを何人で使っているか」、そしてインターネットに接続している「回線の太さ」です。

 これらのうち、最も気になるのは一台のサーバーを何人で共有しているかです。

 割り当てる人数が多いサーバーは、夜間などの混雑する時間帯に、動作が不安定になったり表示速度が極端に落ちる傾向にあるようす。

サーバーの応答速度はどう確認する?

 サーバー一台に何人割り振られているかは、どのサーバー会社も公表していないようですので、実際のところは、周囲の人に聞いてみるしかなさそうです。

 札幌Geezer的には、使用料の目安として月1,000円よりも大幅に安いものは、ビジネス用としては選択しないのが賢明だと考えています。

サポートの良しあしは何で決まる?

 サポートが必要と感じた時に「すぐに話ができる」かどうかが最も重要だと、札幌Geezerは考えていますが、皆さんはいかがでしょう?

 特に初心者のうちは、どこからがワードプレスの問題でどこからがサーバー側の問題なのかの切り分けもできませんから、ネットで検索しようにもどのようなキーワードを使えば知りたい情報にたどり着けるかが分からない状態だったりします。

 そんな時に、丁寧に対応してくれるサポートにすぐに繋がると大助かりです。トラブルの原因がサポート対象外のワードプレスの使い方の問題だと、指摘されるだけでも随分と違うものです。

 ですが残念ながら個人向けがメインとなっているレンタルサーバーの場合には、サポートの電話番号がすぐには見当たらない、というのが現状です。月額1,000円台の料金で、いつでも電話できて素早く対応してもらえることを期待することのほうがどうなのかと、札幌Geezer的には思います。

 サポート重視でレンタルサーバーを選ぶなら、企業ユーザ向けのサービスを展開している事業者を選ぶことです。以下で、2社紹介しておきます。

レンタルサーバー各社の特徴

 月1000円台のレンタル・サーバーで、上記(安定性・バックアップ・拡張性)の3点に「サポートの迅速さ」を加えた全てで好条件が揃っているものは、札幌Geezerが知る限りではないようです。

 そこで以下、札幌Geezer的にお勧めできるサーバー会社の特徴を簡単にまとめておきます。何れも、札幌Geezerが利用したことがあるか、または仲間の評価が高いものです。

 表示した料金は、2023年10月現在のものです。

さくらインターネット

 さくらインターネットは、現行の新サーバー前のものですが、札幌Geezerも利用していました。レンタルサーバーの会社としては老舗のひとつで、廉価のスタンダードプラン(年間一括5,238円)でも、比較的安定はしているようです。

特徴

バックアップ:さくらのレンタルサーバーの最大の特徴は、ステージング機能で、手軽なバックアップとしても利用可能です。

拡張性:札幌Geezerが利用していた当時はさくらの場合はこの点が弱かったのですが、現在は転送量無制限となっていますので、アクセス量が増えたからと言って、制限がかかることはなさそうです。

 ただし、一時にアクセスが集中した場合の表示速度がどうなのかは、気になります。一度プランを決めてしまうと、上位プランへの移行はできず、新たに契約をしてデータを移行することが必要です。

 札幌Geezerが使用していた時(旧システムでのスタンダードプラン)は、アクセスが増える夜間の応答速度が目に見えて悪くなりました。料金が他のレンタルサーバーよりも安めであることから、個人ユーザ数が多いためと思われます。さくらを選ぶ場合には、プレミアムプラン以上を選択するのが良さそうです。

エックスサーバー

 エックスサーバーは、同価格帯の他のサーバーよりも表示速度が速く安定していることが評価されているようで、ブロガー・アフィリエーターさんの間で人気のサーバーです。

 札幌Geezerも現在利用中で、上記のさくらインターネットから引っ越してきました。移転の際のツールが準備されていて、説明も分かりやすく、スムーズに引っ越しできました。

特徴

転送量:一日あたりの転送量の制限が2022年3月に撤廃されました(公式発表はこちら)ので、上位プランへの移行を考慮するのは、定常的にアクセス量が増えハードウェア的に増強したいと感じた時だけになりそうです。プランの移行は、月単位となっている点のみ注意が必要です。

バックアップ:従来はこの点が弱かったエックスサーバーですが、2020年9月に自動バックアップの機能が備わりました。ウェブ領域(ワードプレスであれば本体とプラグイン)については、サーバーのコントロールパネルからの操作で、復旧できるようになっています。

WordPress クイックスタート』機能の提供:エックスサーバーでは、全くの白紙状態から申込み後、一気に WordPress サイトを立ち上げてしまう便利サービスを提供しています。利用できるのは、ドメインの取得もレンタルサーバーの契約も「まだこれから」という方だけです。

 シンプルなブログサイトを手早く立ち上げたいということであれば、便利だとは思いますが、その分サーバーの機能やワードプレスの仕組みなどを理解する機会が奪われてしまいかねません。自分の手である程度自由にデザインし、機能を選べるようになることが目標の場合には、お勧めできません。

 この機能の詳細については、公式サイトの記事がわかり易くなっていますので、お勧めです。

WPX Speed

 wpX Speed は、エックスサーバーが別ブランドで提供しているもので、ワードプレスに特化したサービスとなっています。提供されているサービスは、利用時間単位で料金が計算されるクラウド型です(月当たりの上限あり)。

 札幌Geezerは、wpX Speedになる前の旧版のレンタルサーバーを利用していました。下記の WADAX からの移転でしたが、確かに速くなりました。新サービスが登場してからは、それには移転せずに、エックスサーバーに切り替えました。

特徴

転送量:廉価のW1プランでは、1ヶ月あたりの目安として13.5.5TBとなっています。他とは異なり月当りとしているのは、アクセスの急増時に柔軟に対応できるようなシステムになっているためのようです。

 とはいっても、13.5 TB という転送量は、よほど大規模なサイトでない限り気にする必要性はなさそうです。

拡張性:「プラン変更の条件・予算は任意で設定できる」という柔軟性は、必要なものを必要な分だけ提供する『クラウド型』のコンセプトをレンタルサーバーに導入した感じです。

バックアップ:エックスサーバーと同じです。

ConoHa WING

 ConoHa WING(コノハウイング)は、Wpx Speed と同様に、クラウド型のサービスを提供しています。

 新しい会社ですが、仲間のひとりが使っていて、「確かに速くて好感触」を得ているとのことです。

 Wpx Speed や ConoHa のように、必要な時に必要なだけという考え方でレンタルサーバーを提供する手法が、今後は主流になっていくと札幌Geezerは、考えています。

WADAX

 WADAXは、札幌Geezerがワードプレスを本格的に使い始めた頃に利用していた会社です。SECOM の資本が入っているということで、「セキュリティーがしっかりしていそうだ」と考えて選んだ記憶があります。

特徴

 WADAXの特徴はなんといっても、サポートがしっかりとしていることで、確かに電話もつながりました。札幌Geezerも最初の頃は、これで随分と助けられたと記憶しています。

 ただしその分、基本プランのディスク容量が 50GB、マルチドメインも10個までと他のレンタルサバ―会社と比べると見劣りしますし(でも通常はこれで十分すぎると思います)、料金も割高です。

 札幌Geezerは、WADAXからWPXに移転したのですが、その理由は、ワードプレスの動きに対する対応が当時は遅かったのです(php のバージョンなど)。最初は、セキュリティーがしっかりしていることの裏返しだろうと理解していたのですが、結局移転しました(何年も前のことです、念のため)。

 尚現在は、提供しているサービス内容も企業向けのクラウドプラットフォームの提供がメインになっているようで、ウェブサイト向けには、「あんしんWPサーバー」ひとつのみとなっています。

WebARENA

 WebARENAは、札幌Geezerが初めてホームページを公開したときに利用していました。

 ワードプレス以前のことで、随分と昔の話になります。現在も、レンタルサーバーのサービスが残っているようですが、データセンターの提供など、企業が社内ネットワークを構築するためのサービスがメインのようです。

余談:サーバーの引っ越しを余儀なくされることもある

 サーバーとはいえ、パソコンと同じコンピューターです。年数とともに古くなるものですから、いつまでも使い続けられるとは限りません。新しいシステムが導入された際には、そちらに移転することを勧めるメールが、サーバー会社から届くことがあります。

 札幌Geezerも、これまでに2度ほど、そのような経験があります(さくらインターネットと WPX )が、この場合には、素直に引越をするのが吉です。引越の作業は、サーバー会社が有料で提供していることも多いので、チェックしておきましょう。

サーバーではなく WordPress を借りる方法もある

 番外編みたいになりますが、wordpress.com もお勧めできるサービスのひとつです。この場合は、レンタルサーバーを契約する必要性はありません。

 札幌Geezerも、ブログサイトのひとつに、現在も wordpress.com を利用しています。

 ビジネスプラン(テーマやプラグインを自由に選べる)は、年一括払いで月あたり2,900円となりますが、サーバーとワードプレスそのものに対する管理に要する時間を節約できる時間を考えると安いと思います。

wordpress.com を選択する際の注意点

 wordpress.com は、一契約一サイトのみです。レンタルサーバーのように、一契約で複数のサイトを持つことはできません。また、借りるのはセットアップ済みのワードプレスですから、メールの送受信に関する機能は含まれていません。このため、独自ドメインのメールを利用する場合には、別のサービス(例:Google Workspace等)を利用することが必要です。

 wordpress.com のような 「WordPress のホスティングサービス」は他にもありますので、気になる方は探してみると良いと思います。その場合には、日本語サポートがしっかりしているか確認しましょう。

結局、どのレンタルサーバーが良いのか?

 結論から先に書きますが、札幌Geezerが現在利用しているのは、エックスサーバーと wordpress.com のふたつです。

 とは言っても、これは予算を含めたバランスが札幌Geezerの発信事情に合っているからです。

 札幌Geezerが経験したものの中で強いてお薦めを挙げるとすれば、初心者の方であればWADAXでしょうし、発信することそのものに集中するために維持管理から解放されたいということであれば wordpress.com、広告収入を得るなどのために検索からのアクセスを稼ぐことが特に重要な方向けには、Wpx Speed や ConoHa Wing ということになりそうです。

 このように何を重視して選ぶかはそれぞれですし、ウェブサイト(ホームページ)は、その利用目的やコンテンツ(内容)の量と更新頻度、さらにはどのような機能を持たせるかも様々です。

 このようなワケですので、これをお読みいただいている「皆さん全員に共通する答えはありません」ということで、ご理解下さい。

この講座の要点

  • 容量、転送量、マルチドメイン数の単純な比較はあまり意味がない
  • 安定性、バックアップ機能、拡張性、応答速度、サポートと予算との兼ね合いで選ぶこと
  • 周囲に使っている人がいれば、その人の意見も参考にすること
  • ワードプレスを借りる選択肢もあること

ご質問・ご要望について

 疑問に思うことや説明が至らないことがありましたら、遠慮なく下のコメント欄またはお問い合わせフォームからご連絡いただければ幸いです。今後の更新作業の参考にさせていただきます。

課題

1.自分の言葉でまとめておこう

 この講座で、得た学びを自分の言葉にしておきましょう。箇条書きが良いと思いますが、自分のスタイルでOKです。紙のノートでもパソコンやスマホのアプリでも構いませんが、脳内に留めずにその外側に一旦はアウトプットすることが重要です。オススメは紙のノートです。いつでもパラパラと眺めることができ、記憶に残りやすいからです。

2.調べてみよう

 レンタルサーバーの会社のウェブサイトを訪問してみましょう。その際に分からない言葉については、ひとつでもふたつでも、検索して調べてみましょう。

3.発信しよう

 「これは参考になった」あるいは何かの「インスピレーションを得た」ようなことがあれば、同じように感じる方が、あなたの周りにもいるかも知れません。学んだことをあなたの言葉で(←ここが重要)人に伝えようとすることで、それが自分のものになることを体験しましょう。


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